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2007年9月28日 (金)

The Best of Best

Dscn2058 思えば、小学校4年生に野球を始めてから、夏は毎年野球漬けの日々を送っていた。そして、今年も夏がやってきた。

夏と言えば海、お祭り、花火などたくさん楽しみはあるが、アメリカで夏と言えば野球しかない。NBANFLNHLもやらない。夏にあるのはBaseballだけだ。

野球漬けという名の漬物は日本でしか食べられないとある本に書いてあったが、アメリカにも野球漬けはあった。しかし、日本のようなしょっぱさはなく、そのかわり甘くて酸っぱい味がする。

今までのようにやらされる夏ではなく、自分で飛び込んだ夏。誰かの夢を背負うわけでもなく、誰かの敷いたレールを進むわけでもない。

すべてを自分自身で感じ、自分自身で決める。いつも側にいて助けてくれる仲間はひとりもいない。だから、何があっても後悔だけはしないよう心に誓った。

夏の出だしは日本にいたが、ビザの取得が初めて上手く行き開幕直後にチームと合流することができた。

渡米直前は、カナダのセミプロやオーストラリアのトライアウトキャンプなど最悪の事態も想定していただけに、我慢が実った順調な滑り出しとなった。

しかし、渡米後2週間は、今まで味わったことのないぐらいタフでハードな夏だった。嵐のように過ぎ去った激動の2週間。残ったのは、孤独と不安だけだった。

初めて経験するプロチーム。プロとしての態度、心構え、野球への姿勢を見出すのに苦労した。

また、初めてのホームステイ。家へ帰ってもアメリカの文化や生活習慣、食事や言葉に片時も気が抜けない日々だった。

そして、プロデビュー。初めてのマウンドで3000人のファンを前にして滅多打ちにあい、今まで苦労して築き上げてきた自信とプライドを木っ端微塵に打ち砕かれた。

そして、解雇。ピッチャーにとって、嫌なイメージを払拭するリベンジの機会が二度とやって来ないのは本当に堪える。結局、アンダーソンでのデビューまでずっとあのイメージを引きずることになった。

結果的に見れば、この2週間で今シーズンの運命がすべて決まったと言っても過言ではないように思う。春に描いていた理想のシナリオがすべて崩れた瞬間だった。

しかし、そのおかげでこの世界の厳しさを知り、今後の課題を見つけ、新しい本に出会い、自分を見つめなおす機会をもらった。今では、とても良い経験になったと前向きに捉えている。

シーズンが終わってからも、もしあのときのピッチングが上手く行っていたら今頃どうなっていただろうかと考えることがある。

もしそうなっていたとしても、それはそれで貴重な経験をしただろうけど、万事順調な人生などこれっぽっちもおもしろくないだろうとぼくは思う。

実際、そのときの心境は誰だって落ち込むだろうし、どんなに強がりを言っても不安や恐怖にさいなまれることは事実だ。

正直、相当落ち込んだし、なんて情けない人間なんだと何度も自分を非難した。周囲の目を気にして、自分らしさを失いそうになることもしばしばあった。

でも、もちろんあきらめようと思ったことは一瞬たりともなかった。何か自分を変える方法はないか、どこかに次のチャンスは転がっていないかと、何かを求めることだけはやめなかった。

練習生としての日々は、我慢の連続だった。どんなにボールを投げても、どんなに長い距離を走っても試合には出れない。ユニフォームも着れない。

なぜ練習をするのかと言えば、それは試合に勝つためだ。試合では、練習したことしか出ないんだから、みんな必死になって練習するんだ。

でも、ぼくは練習が終わったら私服に着替えて観客席へ移動する。そして、練習とは無縁のお客さんに紛れてチームメイトの活躍をながめる。

ぼくは、試合に出れないことがこんなに辛く悔しいものだとは思わなかった。今までのぼくは、マウンドで投げるたった一球のために生活のすべてを捧げたことはなかったからだ。

でも、今回は1日24時間すべてを野球のために捧げた。毎日球場へ通ってトレーニングをし、どんなコンディションでも絶対に手を抜かないと心に誓った。

朝起きたらまず右腕を一周させその日の状態を確かめ、どんな場所でも右腕を冷やさないように気を使い、右腕をつぶさないように寝返りを打ち、毎日シャワーでマッサージをしながら「頼むぞ」と声をかけた。

だから、そこで得た忍耐力、チャートをつけて気づいた日本とアメリカの違い、そしてひとりひとりの選手の癖、ブルペンでは学べない貴重な経験をさせてもらったと今では感謝している。

また、アンダーソン・ジョーズとの出会いも、ぼくを大きく成長させてくれた。チャンスはどこにでも転がっていること、それを掴むのは自分自身なんだということを学んだ。

そして、なかなか思い通りにことが運ばないときでも、思い切って何かに挑戦すればその流れを変えることができるということも学んだ。

今まで数え切れないぐらいぼくを助けてくれたキャッシュ・ビーチャムと一緒に生活をし、一日中彼からピッチングの指導を受けた。

彼は、どんなに厳しい状況でも冷静な判断でチームを勝利に導いたし、常に選手やファンから絶大な信頼を得ていた。

そして、いつも表情は明るく、彼のハートは野球でいっぱいだった。何よりも野球を愛し、野球を好きでいることの大切さを彼から学んだ。

マウンドにおいては、相変わらずだらしのないピッチングを続け、プロ野球選手としての存在価値を示すことはまったくできなかったが、それでもみんなぼくを励まし支えてくれた。

マイクの指導はぼくのレベルを確実に高めてくれるものになったし、若いチームとは違い選手同士が教え合うスタイルをとるジョーズの環境が、ぼくにたくさんのアドバイスをくれた。

尊敬できる友達とも出会い、野球選手としての心構えをたくさん学んだ。とにかく結果が欲しくて欲しくてたまらなかったが、今となってはそれ以上のものをもらったような気がする。

だから、フローレンスを首になったことでアンダーソンに行けたことは本当に良かったと思っているし、まったく後悔していない。

春の契約交渉で、サウスジョージアをけってフローレンスを選んだのも、フローレンスを離れアンダーソンへテストを受けに行ったのも、自分自信で決断したことだった。代理人の指示でも、先輩方のアドバイスでもなく、自分自身で選んだ道。

だから、そこで何が起きようと、どんな環境に立たされようと、それは誰のせいでもなく自分自身の責任なんだと自分に言い聞かせた。

また、忘れてはならないのがホストファミリーの存在である。ぼくが今シーズンぶじ野球をやれたのは彼らがいたからにほかならない。

シーズン中はもちろん夏が終わっても、彼らはずっとぼくのことをサポートしてくれ、常にたくさんの愛情をもって接してくれた。

ぼくがもっと上手に英語がしゃべれれば、今以上にたくさん恩返しをしてもっとたくさん感謝の気持ちを伝えられるのに、それができないことが歯がゆくてしょうがない。

でも、彼らはぼくのユニフォーム姿をとても喜んでくれるから、いつかあのマウンドで、ぼくのピッチングで彼らに感謝の気持ちを伝えられればなと思っている。

ぼくがこの夏読んだ一冊の小説に、こんな言葉があった。

「スポーツとは、それをやる者が自分の限界に挑み、勝つために戦うプロセスを楽しめなければ意味がない。」

「人間は、失敗や不運を経験しないことが尊いんじゃない。それをどうやって乗り越えるかで、その価値がわかる。」

所詮、結果は結果。良いときに喜び悪いときに落ち込むでは、スポーツの本当の楽しさとは言えないということだろう。

そして、失敗しないために挑戦をあきらめ、転ばないために平らな道を歩くのでは、人間の本当の価値は生まれないということでもあるんだろう。

今年の夏は、本当に本当にいろいろなことがありました。辛いことも楽しいことも、良い思い出も悪い思い出も本当にたくさんです。

確かに、そのときそのときの一瞬で見れば、辛く苦しいことの方が多く、お世辞にも笑顔で楽しんでいたとは言えません。

でも、こうやって振り返ってみれば、過去に起きたことすべてが現在とぴったりリンクしているようで、今の自分がとても幸せだから、この夏起きたこと、新しく踏み出した一歩、一か八かで挑戦したチャレンジがすべて正解だったような気がします。

だから、自信をもって、今回のチャレンジを、そしてプロセスを楽しめたと報告したいと思います。結果は悪かったけど、そこに至るまでの道のりは決して間違っていなかったと思います。

今回の挑戦をサポートしてくれたみなさん、そして応援してくれたみなさん、本当にありがとうございました。みなさんのおかげで、今シーズンぼくはマウンドに上がることができました。

また、このブログを見てメッセージをくれた方々にも大変感謝しています。このブログが、少しでもみなさんに対する恩返しになればと思い、拙い文章ながら書き続けることができました。

この夏書いた文章で、少しでも野球の楽しさや素晴らしさを感じ取って頂けたらうれしく思います。

そして、いつもぼくの挑戦をやさしく見守ってくれる家族、ぼくの決断を最大限尊重してくれるクワン国への大使“エージェント”にも感謝しています。

この夏は、間違いなくこれまでの人生の中で最高の夏になりました。ハッピーで始まってハッピーで終わる。そのあいだに何があろうと、目指す先は変わりません。

これからもこの挑戦を続け、来年の夏もまた今年以上に最高の夏になるよう頑張って行きたいと思います。そして、みなさんにとっても最高の夏が迎えられますように。

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コメント

やっと本当に一歩を踏み出した。それは希望という名の未来がある場所で、それが陽にとってはメジャーリーグだな。今日も話したけどゴールは遥か先にある。

そして陽には次に続くもののために‘‘道‘‘を創る使命がある。エリートではなく、ストリート魂が必要だ。だからこそ今までの倍以上の‘‘決意‘‘と‘‘情熱‘‘で困難に見える壁を打ち砕いていって欲しいと思ってるし、陽にならできるはずだ。

人がやってきたことをやることには、何一つ意味はない。時代を創るということは、新しい可能性を切り開くということだよな?

誰にも理解されないことをやることに、またそれをとことんやり続けることこそが今の挑戦を具現化する唯一の方法だ。伸び白はまだまだたくさんあるよ。自分でも気づいてないレベルでも本当にたくさんある。

だからこれからもその野球に対する愛情を持ち続けて、全てを包み込むような強さと前にでる姿勢を持ち続けて、頑張れ!!keep it real Bro!!

投稿: Yoshi | 2007年10月 1日 (月) 01時23分

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