in Trouble Again
アメリカの父と呼ばせてもらっているキャッシュ・ビーチャムがつけてくれた“RUBBER ARM”という名前だ。
2005年の最初の渡米以来、ずっとぼくを可愛がってくれる彼の下で今プレーさせてもらっている。
そんな彼がつけてくれた“RUBBER ARM”というニックネームは、ぼくにとって最高の褒め言葉だ。
“RUBBER ARM”は直訳すれば「ゴムのような腕」と訳すことができるが、野球界では「絶対に故障しない頑丈な肩」を意味する。
ストレッチやアイシングに無頓着なアメリカ人に比べて肩のケアを怠らず、毎日ブルペンに入って毎日マウンドに上がれる。
そんなぼくの仕事っぷりを表現したのが、この“RUBBER ARM”という言葉だ。
キャッシュは、また、口が悪いことでもよく知られている。
だから、みんなの前で「お前の肩は、RUBBER ARMだろ?」と聞かれたとき、ぼくは意味がわからず、また汚い言葉でぼくを冷やかしているんだろうと思い「はい、そうです。」と適当に答えたら、みんなが一斉に笑った。
あとあと、ルームメイトから、「俺たちは、とてもじゃないけど毎日マウンドに上がれるなんてお前みたいに自信をもって言えないんだよ。」とみんなが笑った理由を教えてくれた。
彼は、いつもぼくのピッチングを必要としてくれる。
足を捻挫して1日休んだときも「俺にはお前が必要だ。」と言ってくれたし、ぼくが「今日も投げれます。」というと、あの大きな体でおもいっきりぼくを抱きしめてくれた。
チームメイトの中には、毎日投げられる奴なんかいないんだからとキャッシュの言動に否定的な人間もいる。
しかし、ぼくは、彼の意見は正しいと思う。
毎日ブルペンに入って毎日試合で投げるのがリリーバーの仕事だし、それができないようでは次のレベルには行けない。
それを誰よりも熟知しているから、キャッシュは期待を込めてぼくに毎日投げるよう要求する。
そんな大切な人の下でプレーさせてもらっているから、今の状況が歯がゆくてしょうがない。
初戦での登板以来、ぼくはひとりブルペンに入り続け、寒さに凍えながら3回も4回も肩をつくる日々を過ごしている。
そして、これまでに3回の登板機会をもらい、2回目と3回目は彼の期待を酷く裏切った。昨日は途中で自主的にマウンドを降りた。
やはり、今のぼくには“RUBBER ARM”は相応しくない。肩は完全に完治していなかった。
120%の力でマウンドに上がると、激しい痛みが肩を突き刺す。昨日の夜は、一晩中腕が痺れていた。
肩さえ痛くなければ絶対に抑えられる。絶対の自信があるし、今までの経験で充分な確信もある。
肩さえ痛くなければキャッシュを喜ばせることができる。また、一緒に喜びを分かち合って、おもいっきりハグしたい。
だから、この言葉を聞くたびに、罪悪感でいっぱいになる。
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